第9章 風柱と那田蜘蛛山
「つまりこの輩達と鬼は徒党を組んでいるということか?!……いや、まずは君達に礼を言わねばならないな。来てくれて感謝している……お陰で更紗は一命を取り留め、こうして最悪の事態は免れた」
3人に頭を下げる杏寿郎の背中を叩き、顔を上げさせたのは天元だった。
「んな事気にすんな!礼ならお前の肩に乗ってる鎹鴉に言ってやれ!そいつと姫さんの……神久夜だったか?そいつらが血相変えて伝えに来てくれたからな」
そう言われて肩に乗っている自身の相方を見ると、天元に頭を撫でられ誇らしげに胸を張る姿が目に入った。
「そうか、君が。助かった」
「ウム!キニスルナ!」
杏寿郎と似た言葉遣いで返事をすると、その肩から黒い翼を羽ばたかせて空へと飛び立ち辺りを見回るかのように大きく旋回しだした。
鎹鴉がその様子だという事はまだ全てが解決しておらず、この件に関わった輩を全員捕縛した訳ではないのだと物語っている。
杏寿郎が視線を空から仲間へ戻すと、実弥は今にも日輪刀を男たちに振りかすのではないかと感じる程の視線を地面へ送っていた。
だが日輪刀は鬼を斬る刀。
鬼に組みしているかもしれぬが鬼ではない一般人を斬っては罪に問われるのは実弥だ。
それを本人も理解している為、視線を向けるだけで止めているのだろう。