第4章 鍛錬と最終選別
「私こそ、あそこから助け出して下さって、見つけてくださってありがとうございます」
微笑み合うと、杏寿郎は腕の力を緩めて更紗を解放した。
2人にとって今の空間は心地良い空気ではあるが、いつまでもこうしているわけにもいかない。
傷も全て手当しなくてはいけないし、夕餉の準備もするべき事は沢山あるのだ。
だが、無言の状態が続くのも落ち着かず更紗は最終選別終了後から気になっていたことを聞くことにした。
「杏寿郎さん、日輪刀はどのように運ばれるのですか?まさか鎹鴉が運んでは来ませんよね?」
杏寿郎は手当する手を止めずに、少し手元を震わせながら答える。
きっと鎹鴉が首にぶらさげて飛ぶ姿を想像したのだろう。
「担当の刀鍛冶が直接持ってきてくださる!どの刀鍛冶が担当になるかはそれまで分からんがな!」
刀鍛冶とはどんな人達なのか想像している間に杏寿郎の手当は無事に終了し、促されて部屋を出て行く。
この後、更紗は煉獄一家全員から自室に戻るように全力で諭され、不本意ながらも部屋で休ませてもらうこととなった。
やはり疲れは溜まっていたようで、布団に入るとすぐに意識を手放した。