第4章 鍛錬と最終選別
と、心の中で叫ぶも当然誰も杏寿郎の下に穴など掘ってくれない。
しかも事もあろうか、更紗は向かい合っている杏寿郎の着物の襟元をギュッと掴んでしまった。
杏寿郎、万事休す。
(さすがにこのままはまずいな……)
少し、いやかなり名残惜しそうにしながら更紗の頬を撫でて呼び掛ける。
「更紗、このままでは風邪を引いてしまう。起きなさい」
すると長いまつ毛が揺れて、瞼がゆっくりと開いていく。
「ん……杏寿郎さんだぁ……あったかいね……」
そしてそのまま、また瞼は閉じられていき、杏寿郎の布団の中にある方の腕にしがみついてしまった。
(よもや更に事態が悪化するとは?!)
更紗はモゾモゾと杏寿郎に近付き、胸元に顔をうずめて気持ちよさそうに寝息を立てている。
(これは辛い!!心頭滅却、心を鬼にして起こすしか俺に残された道はない!)
再び頬を撫でて呼び掛ける。
「このままだと君を抱きしめてしまうぞ」
むにゃむにゃと言葉にならない言葉を発した後
「いいよー」
(良くないだろう?!君の貞操観念はどこへいった?!と言うより幼子みたいな……ん?俺の事は認識しているが親と混同しているのか??)