第20章 柱稽古とお館様
「見ての通りこいつは女でてめぇより力も体力も劣っていた。今でも腕力だけで言やぁ、てめぇより弱いはずだ。そんな女相手に手ェ出す元気あんだろ?ならこれから俺の稽古にあいつと打ち合った時と同じ時間付き合えやァ!」
なんだか違う方向へ叱責が向かっている。
力尽くで黙らせる方向へいきそうな実弥の隣りに立ち、杏寿郎は怯える剣士に視線を向けた。
「稽古はともかく、あの子は1年余りでほぼ柱と同等の力を身に付けた。それは特異能力による要因も大きいが、柱となるためには剣士になってから5年はかかると言われている中で、たった1年でやり遂げたのだ」
1度言葉を切ると、過去の出来事が頭を巡った。
出会いから更紗は沢山のものを失っていた。
救いたかった青年、居場所、棗……自分自身の寿命。
残酷な現実を突き付けられ押し付けられ、辛いはずなのに歯を食いしばって鍛錬に勤しみ、そして笑顔を絶やさなかった。
「全てを受け入れろとは言わない。だが無理矢理制限された行動範囲の中で人を救うために悩み嘆き、死に物狂いで努力している事を分かってやってくれ。あの子の力は自分の命を繋ぐものを犠牲にして発動させるのだ。その怖さは想像を絶すると思わないか?」