第16章 柱と温泉
「更紗が落ち込むことはない。不死川の考えを君が知っているならば尚のことだ。大丈夫、不死川も更紗との約束を違えるつもりはないと言っていたので、このまま永遠に平行線を辿ることもないだろう」
その言葉に更紗は喜びのあまり杏寿郎の胸へと飛び込んでいった。
ギュウっとしがみついてくる様は言葉がなくとも嬉しいのだと全身から伝わってくるものだった。
これほどまでに仕草だけで嬉しさを伝えられるのかと感心しつつ、杏寿郎は更紗を抱き締め返し里の人が用意してくれていた布団へと誘う。
「もう俺たちも休もう。早く更紗には元気になってもらわなくては心配で仕方ないからな!明日は竈門少年もこちらへ来るので共に出迎えてやろう!」
これもまた更紗にとって初耳。
「炭治郎さんも来られるのですね!それはぜひお出迎えしなくてはいけません!早く休みましょう!……杏寿郎君、一緒のお布団で休ませて頂いていいですか?1人は寂しい」
10日ほど1人昼間に野宿をしていた更紗は人肌が恋しいらしい。
そんな願いを断るはずもなく、杏寿郎の浴衣の袂を握る更紗の手を取って頷いた。
「ここにいる間は何でも叶えてやる!存分に甘えてくるといい!」
こうして更紗の小さな願いは叶えられ、平和な一時は過ぎていった。