第16章 柱と温泉
きっと更紗が恋人であったり家族だった場合、今のような関係にはなれていないだろう。
杏寿郎という存在がいてその継子という立場だからこそ、可愛がって貰えるし優しくしてもらえている。
「それってどういう意味だ?」
疑問を持つのも仕方のない答え方だと更紗も思いながらもこれ以上言ってしまうと実弥の意思に反してしまう。
玄弥に嫌われてでも突き放し鬼殺隊を抜けさせて平和で幸せな生活を送って欲しい……と願っている実弥の兄心をどうしても蔑ろには出来い。
更紗の中で玄弥を安心させてやりたい気持ちと実弥の気持ちを尊重したい2つの想いがせめぎ合った結果、どうにかどちらも蔑ろにせずにすむ一言だけ付け加えた。
「愛の反対は……何かご存知でしょうか?フフッ、私が言えるのはここまでです。ご要望あらば私もお力になりたいと思っていますが、まずはお兄様とぶつかってでも直接お話ししてからの方がよろしいかと。ね、杏寿郎君」
部屋にいないはずの杏寿郎の名前を呼ぶ更紗に驚き部屋を見回すと、部屋の中ではなく外から杏寿郎が姿を現した。
「む……気付かれていたか!込み入った話しをしていたようなので、なかなか入りづらくてな!して不死川弟、体調はどうだ?氷を戴いてきたのでまだ優れないのであれば使いなさい」