第72章 乞い願う、光を求めて
ただ一人を除いて。
「義勇さん。刀を納めて下さい」
「いくら白藤が庇おうと俺は引けない」
「……そうですか。ならば、炭治郎君と共に私の頸もお取り下さい」
「………何を、言っている……」
冨岡の思考が揺らぐ。
「鬼が憎いのは、この場にいる皆さん同じ気持ちでしょう。そんな中で鬼になった炭治郎君を許せないという貴方の気持ちも、兄弟子としての矜恃も理解しますが、ここまで一緒に生き抜いてきた炭治郎君を始末するというのならば、私の頸もお取り下さい……」
「何故、そこまで……?」
「義勇さん。私、もう充分です。貴方に愛して頂いて、私は……幸せな時間を沢山過ごせました」
「………俺では駄目だと言うことか……?」
「違います!私は……!!」
冨岡が顔を俯かせ、両手をダラりと下げる。
「お前も……俺を置いて居なくなるのか……」
「無駄話は終わりか?さぁ、竈門炭治郎!いや、鬼の王よ!今こそ……我が前に……」
すぱん!!
ごろりと頸が転がる。
かつてない早業に蘆屋道満も自身が斬られたのを理解するのに数秒を要した。