第3章 肺呼吸の不得手な君へ
「ま、あんま無理しなや…まだガキなんやからガキらしくしとけ。周りに気ィ遣いすぎると自分がしんどなるで」
「……隊長、ほんまお人好しやね」
少し耳を赤くしながら困ったように笑う市丸は、多分、他人に甘えるという事を知らないのだろう。こうして子供扱いされることも、触れられることも、慣れていないように見えて。
「よっしゃ。まずはその顔から変えたるわ」
「顔?」
「何でもかんでも笑って流すんやめろ。その所為でお前の思うてることわかりにくいねん、こっちは」
「えぇー…もう癖やから直りませんて」
「いーやまだ間に合う。俺が直したるわ」
「……お節介」
「おーおー何とでも言え。その化けの皮剥がしたるさかい」
「化けの皮て…。人聞きの悪いこと言うのやめてくだはります?処世術や」
「似たようなモンやないか!」
ギャーギャーと騒いでいると、からりと店の扉が開く音がした。入ってくるその人物の霊圧は覚えがある。というより、何故こんなところにいるのだろう。
「おやぁ、平子君に噂の天才少女じゃないの」
「市丸愛美ちゃんだよ、京楽」
「浮竹サン、京楽サン。何であんたらが此処におんねん」
「浮竹の調子が良いからちょっと散歩しててね。そしたら、店の中に君達が楽しそうに話してるのが見えたからさ」
この天才少女に興味もあったし、つい、ね。のらりくらりと言うこの人は、こんな形して喰えない人だ。京楽サンにつられて市丸の方を見ると、浮竹サンと和やかな雰囲気で会話を楽しんでいる。髪の色が似ているからかなんなのか、浮竹サンは市丸を気に入っているようだった。
「本当に残念だなあ。十三番隊に来てくれれば良かったのに…今からでもウチに来ないかい?」
「そう言うてもらえるんは嬉しいんですけど、ええ加減諦めてくだはりますやろか」
しつこい浮竹サンに、市丸が苦笑いを見せる。京楽サンによれば、最近はずっとあんな調子らしい。
「このクソガキ、ウチのやからあげへんで」
「平子隊長、」
その白髪頭を金髪にしてから出直しィ!言うと、浮竹サンは首を傾げた。市丸は少し困った顔で笑っていた。
肺呼吸の不得手な君へ