第7章 御幸の記憶
俺がなんでそんな質問をしたのか、哲さんにはわかってたみたいだ。
情けねぇなほんと。舞ちゃんへの想いをハッキリと自覚して
距離感を共に戻して、迎えた年末年始。
どさくさに紛れて、舞ちゃんにキスをした。
最低と言われて落ち込む。
しょうがねぇだろ。
好きだと思っている女が、真っ赤になって固まってる。
そんなかわいい姿見たら。
もっと俺だけを見てほしかったから。
抑えても抑えきれなかった想いが溢れた。
初練習が始まっても、目も合わせてくんねぇ。
思いっきり目を反らされたし。
凹む。
忘れるから忘れろと…
無理だと思ったが、それを言うと金輪際口聞いてくんねぇよな。
一応、わかったと返事した
だけど、あんなかわいい顔と柔らかな唇、忘れられるわけねぇだろ。
とっくに気づいていたけど、気づかないふりをしてやり過ごしていた彼女への気持ち。
忘れてと言われて、更に思い知らされた。
倉持から鈍感女と言われる彼女を振り向かせるのは長期戦。
攻略が難しければ難しい程、燃えるよな。
ずっと舞ちゃんのそばにいた。
舞ちゃんへ想いを寄せているやつへの牽制も含めている。
「御幸と矢代はいつも一緒のことだな」
「俺が舞ちゃんに構ってほしいんで、くっついて回ってるんですよ」
普段チャラけているから、これも冗談だと受け取ってもらえる。
簡単に誰かに渡せるわけねぇよ。
舞ちゃんは、かっこいいねって言ってくれたあの女の子だったし。
今思えば、あれがきっと俺の初恋。
クラス離れたらきついなと思っていたが、2年も同じクラスになることが出来た。
「御幸くん、おはよう。」
「はよ。今日も、よろしく。」
「チャンスに強いバッティング、今日も頼むね」
「ホームラン撃ったら、アイスな」
「私に不利すぎるから却下。」
今はこれでいい。
舞ちゃんに見守られて、先輩達と目標に向かってがむしゃらに。
一日でも長くこの先輩達と野球がしたい。
あと3ヶ月だもんなぁ…。
吸収できるものは全部吸収する。
甲子園に行くために。