第31章 王谷戦
「ナベちゃん試合の映像見るの?」
「見るよ。矢代も手伝ってくれるの?」
「手伝いたい。」
食堂でナベちゃんと2人王谷の試合を見てノートに纏めた。
工藤くんも東尾くんもやってきた。
「やっぱりまだやってた。」
「矢代も、遅くまでやってんのな。」
「なんかわかったか?」
ナベちゃんは、もしかしたら相手チームのサインを解読してるかもしれない。後半に仕掛けてくることがやたらあるしと2人に答えた。
守備だって打撃だってうちの方が上だって力強く言った。
「なんか楽しそうだな。」
「ナベちゃんいい顔してるよ」
みんなに置いていかれると焦っていたみたい。
「御幸がスタンドに向かって謝ってくれたのほんとうにうれしかったんだ。自分もチームの一員だって…」
ナベちゃんが嬉しそうに話してくれたから…嬉しくなった。
最近の御幸くんはきつそうでつらそうで、今日だって降谷くんの話が監督からあったとき、一瞬頭抱えていたし。
工藤くんも東尾くんも手伝ってくれて、クセ見つけるぞと意気込んでいた。
「おいおい、矢代泣いてるのか?」
「ご、ごめ…なんかね、嬉しくて。チームが纏まってきたような…
やっぱりみんな目指しているところは一緒なんだなって思ったら安心して…」
「それに御幸のことだろ?」
「え?え?」
「御幸を見つめて泣きそうな顔してた…」
「ナベちゃん、工藤くんも野球のことだけじゃなくて、人のこともよく見てるんだね…」
「矢代はわかりやすいから…。」
「そうなの?」
「あいつの事、心配してるのはよくわかるよ。
キャプテンだから僕らにはわからない孤独もあると思う。でも、矢代が一緒に悩んでくれてるから、心配はないよね?」
「役に立ちたいってそれだけで…でも、何をすればいいか…
一人で抱え込まないで欲しいって思っております…」
「御幸にならちゃんと伝わってると思うよ。」
データを纏めるのが終わって監督室に持って行ってくれることになった。
「ここにいたんだ、ナベ達としてたのか?」
「うん。いいのに仕上がったよ。明日みんなに配るって」
「そっか…。じゃ帰るぞ」
寮の前を通って帰っていると2階からナベちゃんたちが晴れ晴れとした顔で手を振ってくれていた。