第15章 しあわせのクローバー【嘴平伊之助】
『んっ…待って、伊之助くん』
「待てねぇよ、椿姫」
お風呂から出て髪の毛を乾かそうとしていると、後ろから抱きつき首の後ろや露出している背中にキスを落とし、時折ちゅっと吸い付き赤い花を散らす。
『あっ…髪の毛、乾かしてから』
「…ん」
わたしがそうお願いすると、伊之助くんは少しムッとした表情を浮かべつつも肯定し、わたしを解放した。
『すぐ乾かすから少し待っててね』
伊之助くんはいつもわたしを優しく抱く代わりに、ほぼ毎日わたしを求めてくる。
わたしたちはキメツ学園を卒業し就職をした。
次の日が休みだと激しく求め、朝までコースなんてザラだったりする。
それでも求められるのは嬉しい。
女のわたしでも性欲はあるし、大好きな人とひとつになれる。
そんな行為はわたしと伊之助くんを繋ぐひとつのコミニュケーションと言える。
なんて考えていると髪の毛もすっかり乾き、ドライヤーや鏡、櫛などを片していると待ってました!とばかりに伊之助くんが後ろから抱きつき、耳たぶをぱくりと口に含み甘噛みを始める。
『あ、んっ…』
耳全般が弱いわたしはそれだけでも、背中がぞくりと震える。
伊之助くんは耳たぶを口に含みながら、背中や太ももを下から上につつーっと撫でる。
『っあ…や、ぁっ』
わたしは身動ぎをすると、ちゅっとリップ音を鳴らして唇が離れた。
「耳だけでこんなになって。椿姫もエロいな」
伊之助くんはそう言うと、わたしをひょいっと横抱きにすると寝室に向かいベッドへ下ろした。
「…明日は休みだったな?椿姫」
伊之助くんは恍惚な表情を浮かべ、ぺろりと唇を舐めるとベッドへ身体を乗せわたしの太ももの上に馬乗りになった。
わたしの着ているキャミソールの上から胸を揉みしだきながら、空いている手でわたしの顎をすくい、そのまま上を向かせると柔らかい唇がわたしのそれに触れる。
触れるだけのキスからどんどん深くなり、くちゅっくちゅっと水音が聞こえ始める。
しばらくすると唇が離れ、伊之助くんはこれっぽっちも息が乱れていないのに対して、わたしの息が荒くなっている。
伊之助くんの瞳の奥に、どろりと欲を孕んだのが見えた気がした。
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