第6章 海辺のバレンタインデー
「まぁ、色々あるわよね。
ほんとに、女として見れないから、面倒臭くて逃げた。とか」
紅さんの言葉がぐさりと心に突き刺さる。
「でもカカシの場合は、どうかしらね。
今の関係を崩したくないってのもあるかもしれないけど……。
アンタたち、仲良いじゃない?
カカシにとっても心地いい関係なんじゃない?
実際アンタが暗部に行ってから、カカシ、少し変わったし」
「え?」
「カカシが暗部に入った頃って、もっととっつきにくかった。
呼びかけても、反応なかったりなんて、ザラだったし」
「そう、なんですか?」
「まぁ、もともと口数も少ないし、優等生でスカした感じではあったんだけど、色々あってね……」
カカシ先輩の班の同期が亡くなっていたことを思い出す。
詳しく知っているわけではないが、先輩がよくお墓参りに行っているのは知っていた。
「まぁ、わたしの口からは詳しいことは言えないけど、それでカカシは大切な人を作るのを怖がっている気がする。
また、失うんじゃないかって思ってるのかもね……」
「……」
カカシ先輩の過去は、わたしには想像もつかない悲しみがあったのかもしれない。
胸がぎゅうっと掴まれたように痛んだ。
「難しいね。
でも、わたしはサクが暗部に行ってくれてよかったって思ってるのよ。
カカシがすごく柔らかくなったから。
カカシにとってアンタがすごく大きな存在だってことは、確かだと思うよ」
そうなのかな……
カカシ先輩が少しでもわたしといて楽しいと思ってくれてるなら、すごく嬉しい。
恋人なんかじゃなくてもいいから、大好きな先輩の側にいたいと思った。
「わたし、カカシ先輩がどんな悲しみの中にいるかもわからないし、何もできないけど、これからもカカシ先輩の近くにいたいです……」
紅さんが少しビックリした顔をして、それから微笑んだ。
「ふふ、なんでカカシがサクの側が心地いいか、分かった気がする。
わたしが言うのは変かもしれないけど、カカシのことよろしくね」
「はい!」
わたしは今まで通り、ただ側にいよう。
ふざけて笑ったり、一緒に時間を過ごせたら、わたしはそれだけで幸せだもん。
わたしは紅さんと話せて、モヤモヤした気持ちが晴れていくのを感じていた。