第15章 風見鶏の家
森の中を歩いていくと、赤い屋根の古いが立派なお屋敷が見えてくる。
「あそこですよね。
大きなお屋敷ですね。」
「うん。」
見上げると屋根の上の風見鶏が、風を受けてクルクルと回っている。
黒い大きな門のベルを鳴らすと、黒い髪に、意思の強そうな茶色の瞳が印象的な、中年の女性が出てきた。
「あの、森の中でアオくんという迷子の男の子に会って保護したのですが…。」
おんぶしているアオくんが見えるように体を少し傾けると、「アオ!」と叫び、すぐに門を開けて飛び出してきた。
事情を説明すると、屋敷の中に招き入れてくれて、親切にも濡れた私たちにシャワーや服までかしてくれた。
人心地つくと、アンナさんと言うその人は、アオくんがいなくなった経緯などを話してくれた。
ここは『風見鶏の家』という養護施設らしく、0歳から16歳までのさまざまな理由で親がいない子供達が一緒に生活している。
アオくんは外遊びの時間にフラリといなくなってしまい、私たちがくるまで、職員や大きな子たちが総動員で探していたらしい。
アオくんは今は自分の部屋のベッドで休んでいる。
「アオを見つけてくれて、本当にありがとうございました。」
アンナさんが礼儀正しく頭を下げる。
「いえ、たまたま居合わせてよかったです。
それにこちらこそ、シャワーや服までありがとうございました。」
「ふふ。
今日は天気がいいし、すぐ乾くからもう少しだけ待ってくださいね。」
アンナさんは、わたしたちがシャワーを浴びている間に、濡れた服まで外に干してくれたのだ。
「すみません。お手数をかけました。」
「アオを見つけてくれたお礼ですもの。
足りないくらいだわ!」
申し訳なくて頭を下げると、そう言って快活に笑う。
素敵な人だな…。
しばらく喋っていると、1人、また1人とアオくんを探しに行っていた人たちが帰ってきた。
「あの、ここには何人くらいの子たちが暮らしてるんですか?」
「今は21人よ。」
「そんなに…。」
「今は少ないくらい。
戦争や飢饉が起きると、もっと増えることもあるわ。」
「そう、なんですね。」
「それに、仕事を見つけてここを出ても、仕事を失って戻ってきたり、そうじゃなくても近くに住んでいたらご飯だけ食べに来たりもするのよ。」
「手厚いですね…。」