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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第29章 風


「俺も一つ、聞いて良いですか?」
「んだよ……」

「あんたは先日ここへ来て、今日も来た。もしかして、怪我…酷いんですか……?」

光希は眉をひそめて不死川に聞く。


「戦いの時、俺を庇ったせいで、負わなくていい怪我をしていたので……」

「別に、テメェなんかを庇った覚えはねェ。勘違いすんなァ」
「歩き方、おかしいですよ」
「テメェが心配することじゃねェ」


不死川は戦闘中を思い出す。


戦いながら、即死しかねない攻撃からは、さり気なく光希を守っていた。

しかし自分が死にそうになった時に飛んできた鞘。「実弥さん!」とかけられた声。
自分よりたいぶ小さなその手に、己も守られたのだと思う。


「怪我なんかしょっちゅうだァ。そんなもん勝手に治るわ。ここへはコレを作りに来ただけだ」

不死川は、調書を入れたポケットを指差す。


「わかりました。お大事になさってください」

光希はそう言って、ぺこりと頭を下げる。


「テメェ、……いつ神社来たんだァ?」
「神社…?」
「………」
「あ、犬ですか?」

光希は気付いて声を上げる。
不死川は黙っているので正解のようだ。


「いいえ。俺は行ってもないし見てもいません。ちょいと小耳に挟んだ情報でカマかけさせてもらいました。へへ」


そう言って少女は笑う。


「こんのやろォ……チッ」

まんまと騙されたことがわかり、その悔しさが不死川の中でいっそ清々しいくらいのものに変わっていった。



「……おい」
「はい」

「好きに呼べ。許可してやんよォ」

不死川はそう呟いて部屋を出ていく。
光希は目を見開いて驚くが、途端に笑顔になった。


「ありがとうございます!実弥さん!」


光希は追いかけて部屋を出て、去っていく『殺』の背中に声をかけた。




大喧嘩して、でもちゃんと仲直りする。
仲直りしたあとは喧嘩前より仲良くなる。これは、彼女がよくやる友達作りのパターンだ。


そして、この強面の柱にもあてはまったようだった。


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