第7章 shed tears (朱桜 司)
「おはようございます。お姉さま」
お姉さまに朝の挨拶をするとビクッと肩が揺れた。
いつもなら笑顔で返事をしてくれるのに何故か今日は振り返ってはくれない。
不思議に思い顔を覗き込むと彼女の目に涙が溜まっていた。
『・・・っ!あ、ご、ごめんね司くん。お・・・おはよう!』
ゴシゴシと勢いよく目元を擦った為か赤く染まり痛々しくなっている。
だけど彼女は痛みを堪えながら精一杯の笑顔で返事をくれた。
「・・・・・どうされたのですか?お姉さま」
そっと彼女の目元に手を寄せて優しく撫でるとぽろっと目元から小さな涙が零れ墜ちた。
『な・・・なんでも・・ないよっ』
震える声を漏らしながら困ったように目尻を下げて慌てて返事をする。
小さく微笑みながら涙を零す彼女を見て、胸が痛んだ。
この学院に彼女が来てから一度も泣き顔を見たことがなかったからだ。
「あぁ・・・・・お姉さま」
『司くんは・・・優しいね』
この学院に一人しかいない華奢で愛おしい女性。
その彼女が涙を流している。彼女の涙を止めることができない自分に腹が立った。
優しく彼女を抱きかかえるとビクッと体が揺れた。
『つ・・・かさ・・・くん・・・?』
「辛いことがあったらいつでも言ってください。泣いたっていいんですよ」
『・・・っ』
小さな手で彼女は僕の背中を抱き締め、涙を流した。