第7章 油断
それから龍太郎が組んだユニットコントで一頻り大笑いして、収録も順調に進み無事終了した。
龍太郎はユニットメンバーと飲みに行くと言って別れたから、俺と簓さんはタクシーを待った。
「どっかで呑んでいく?それとも家で呑む?」
「家で呑むか!」
簓さんはホテルをとらずに俺の家に泊まることになった。
そっちの方が二人でゆっくりできるし。
タクシーを止めて乗り込んで、行き先を伝えるとタクシーは走り出した。
運転手が気付いているかどうかはわからないが、俺たちは後部座席でこっそりと手を繋いでいる。
「フフフッ」
「なんや?」
「なんでもない、クフフ」
「思い出し笑いすなや、気持ち悪い」
若いカップルみたいなことしているなと思うと笑いを堪えきれず声が出てしまった。
そうこうしてる内に自宅に到着した。
タクシーが走り去っていくのを見送ってマンションの扉に手を掛けた、すると簓さんが腕を掴んできた。
「チューしたい」
「はぁ?もう家じゃん我慢しなよ」
「えーチューしようや」
「酔ってる奴かよ」
断ってみたが簓さんは顔を近付けてくる。
外だぞ、何考えてるんだか。
念のため辺りを見回したが人がいる気配はない。
そして流れに身を任せている自分がいる。
唇が重なりあってとても暖かい。
が、重なりあったのはたったの一秒だった。
「さ、行こか」
「もう、なんだよそれー」
簓さんは淡々とマンションに入っていく。
そんなに待ちきれなかった簓さん可愛いな。
なんて、この時はそう思っていた。
年は明けてテレビ番組は正月特番ばかり。
シャッフルパレも放送され好評だったと聞いた。
目が覚めて時間を確認しようとスマホを見れば何十件もの通知が来ている。
シャッパレの反響だろうか。
相方からも着信があり、そんなに興奮してんのかと折り返した。
「今起きた」
『筒井さんの電話くらい出ろ!簓さんとのやつすごいことになってんぞ!お前何やってんねん』
「すまん、なんか好評だったみたいで」
『好評??お前もしかして見てへんのか?』
「シャッパレじゃなくて?」
『あーそれちゃうちゃう!簓さんとの路チューが週刊文秋に抜かれとるで。相方に路チューとか言わすなアホ!』
な、なに?
嘘だろ。