第2章 短編 世話好き兎
「あなた達まだ付き合っていないんですか」
やれやれと銃兎くんは首を振った、二人で会うとこの話題になってしまう。
「お互い気持ちが同じ事くらい鈍感なさんでも分かるでしょう」
「鈍感ではないです」
「あの左馬刻が珍しく慎重ですからね」
「そうなの?」
「ほら分かっていない、それが鈍感というんですよ」
「もーうるさいなー」
「掛けをしましょう」
「掛け?」
「今から左馬刻に電話をして好きかどうか聞いてみるんです」
「答えるわけない」
「では“好きと答えない”がさんの答えですね?では俺は“好きと答える”にしましょう」
「何を掛けるの?」
「俺が勝ったら煙草1カートンで構いません、さんはどうします?」
「1ヶ月私のタクシーになる」
「いいでしょう」
左馬刻くんを探してコールした。
『もしもし』
「です」
『おう、どうした』
「えっと、話があって」
私がモジモジしていると銃兎くんは「は・や・く」と口を動かした。
いつもなら既にキレている左馬刻くんだけど今日は妙に大人しく聞いている。
「私のこと、どう思ってる?」
『どうって』
銃兎くんは「そうじゃないでしょう?」と小声で耳打ちした。
「だから私のこと好きかってこと!」
『でけぇ声出さなくても聞こえてるっつの……あー好きだから安心しろ』
「あ、ありがとう……」
前を見ると銃兎くんは口を手で多いながら肩を揺らしていた。
「ククク、こんなに上手くいくとは」
「まさか銃兎くん」
『銃兎?一緒にいんのか』
「左馬刻くん私達はめられた」
『……なるほど銃兎に代われ』
「左馬刻にはさんから電話があったらちゃんと伝えるようにと言っておいたんです」
「デキレースじゃない……左馬刻くんが電話代われって」
銃兎くんはスマホを一度耳に当てると声を無視して通話を切った。
「さて、掛けの結果ですがさんの負けですね」
「私が好きと答えるを選択してたら?」
「それはさんにとって良い結果、俺にとっても計画を立てたかいがあったという事で」
「ずるい」
「タバコ買って下さいね」
「仕方ない、2カートン買ってあげる!」
銃兎くんは目を丸くした後優しく笑った。