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深海の碧【ツイステ】

第10章 鴨緑ー縛る



「ぜってぇー反対!!」
「僕も同じく賛成できません」
目の前に座る二人は声を揃えてそう言った。目は大きく開かれギラギラとし、かなり苛立っていることが見て取れる。そんな姿を揃って見せるのは珍しい。

既にモストロ・ラウンジの閉店作業を終え、今僕と双子が居るのはVIPルーム。
二人にはどうしても話しておきたいと前置きし、珍しく機嫌の良いフロイドも大人しくソファに腰を下ろしたのは今から1分ほど前のこと。僕が端的に話をすれば、彼等の顔付きはみるみる間に変わった。
僕が話したこと…それは『ユウさんにモストロ・ラウンジで歌手として働いてもらうこと』だった。


「…そこまで反対される理由が分かりませんが」
店で働いてもらえれば、必然的に彼女と一緒に居られる時間は増えるし、他の学生へ牽制も出来ると思うのですが。

「はぁ??アズール馬鹿なの?」
「貴方がこんな簡単なことも分からないなんて」
真顔で言うフロイドに、大袈裟に首を左右に振るジェイド。
どちらの反応も僕を苛立たせるが、大人な僕は冷静に話を聞くことにした。


「小エビちゃんが此処で働き始めたら益々ファンが増えるじゃん」
「ただでさえ錬金術の授業の噂は広まっているんですから」
「成る程…」
確かに2人の話は一理ある。
先日、錬金術の授業で人魚の涙が課題に出され、ジェイドとペアになったユウさんは、歌いながら練成し、完成させたらしい。その歌声は見事なものでジェイドは言わずもがな、教室中の学生を虜にさせたそうで。
翌日になれば、その噂は徐々に広まり、クラスの違う僕の耳にも直ぐに届いた(その話をクラスメイトから聞いたらしいフロイドは、何も話さなかったジェイドに憤り、3日も口も聞かず、漸く仲直りしたばかりだ)。無論それは他学年にも知れ渡ることとなり…


「ヴィルさんが黙っていると思います?」
「「…!!」」
「映画研究会は既に勧誘しているそうですよ。今のところ彼女は断っているそうですが…」
ただ、彼女のお人好しは底抜けだ。頼まれたら断れないタチであることは今まで学園長から無理難題を言われても何だかんだ了承していたことから明白だ。定期テストの際、僕に勝負を挑んできたことからもそれは窺える。
そう考えたのは僕だけではないだろう。ジェイドもフロイドも眉間に皺を寄せてるし、同じことを考えているはず。


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