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深海の碧【ツイステ】

第9章 青竹ー想う



錬金術は等価交換。
ゼロからは何も生まれず、何かを得るためには必ず代償を支払わなければならない。
そう、それは彼の人の契約書と同じように…









「うーん…上手くいきませんねぇ」
「やっぱり混ぜ方の問題でしょうか?」
現在、錬金術の授業中。
2年E組との合同授業で、クルーウェル先生が決めたペア同士で錬金を行うこととなった。私とグリムがペアになったのは、今目の前で顎に手をやり首を傾げるジェイド先輩。

今回の課題は『人魚の涙』。黒板に材料の一覧が書かれ、その下にはたったの一行。
『これらを大鍋に入れ、想いを乗せながら大きな円を描くように混ぜること』とだけ書かれている。
クルーウェル先生の授業は、錬金術にしろ魔法薬学にしても説明が端的で、基本的には自分たちで考えて実践しろ、というスタンスだ。今日もペアを発表し、黒板に書かれた手順をざっと説明しただけで、あとは各自に任せると言って教卓の椅子に座ったまま。
他の教室に調べ物へ出掛けても良いらしく、その時は一声掛けろとのことで、図書館へ出掛けるペアも結構いるみたい。でもどこのペアも目星いヒントは得られず帰ってきている。 
エースとリドル先輩のペアもまだ上手く行ってないようだし…。
私たちも温度や材料を入れるタイミングをずらしたりしているけれど、全く上手くいかず、何も錬成されない。


「そういえばジェイドは人魚なんだよナ?」
「そうですよ、グリムさん」
「ならお前が泣けば、人魚の涙が出てくるってことなんだゾ!」
「…それでは錬成の意味がないでしょう。出るなら出してますよ」
グリムとジェイド先輩の掛け合いを聞きながら、ふと疑問が頭に浮かぶ。


「ジェイド先輩、人魚が泣くのは悲しい時、なんですか?」
「ええ、人間とあまり変わりませんね。ただ、逸話の人魚は何があっても一切涙を見せずいつも美しい歌声を響かせていたと言われています」
「へぇ!」
「ですが、唯一その人魚が涙を流したことがありまして」
「唯一?」
するとジェイド先輩は、右手に持っていた木べらを大鍋に立てかけ着けていたゴーグルを上にずらした。
左右異なる眼が真っ直ぐ私を見つめて。


「失恋したとき、だそうですよ」
「…!」
「愛していた人間の男が他の女性と結ばれたときに」
そう話すジェイド先輩の瞳は何を語っているのだろうか。


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