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深海の碧【ツイステ】

第8章 柳染ー知る



真っ暗闇の体育館倉庫の中。
唯一の光は、格子窓から入る月明かりのみ。
目の前には、先日想いを打ち明けられた先輩。
此処から立ち去ろうにも、唯一の出入口は鍵が締め切られてしまった…

「フロイド先輩、マジカルペンは…?」
「部室のロッカー」
「……ですよね」
魔法が使えないとなると、誰かが気付くまでこのままということだ。恐らく皆夕食中で、就寝は各寮の自室になる。私が居なくても既に寮で休んでいると思われたかもしれないし、まして気分屋のフロイド先輩が居なくても気にならないだろう。
ちらりとフロイド先輩を見れば、彼の目はまだこちらを見つめていた。そんな彼に私は何を返すこともできず、気まずい空気としか言いようがない。

『誰よりもユウの一番になりたいって言うのはだめ…?』
真っ直ぐな瞳で見つめられ、そう言われた言葉が頭から離れず、先輩の方を見ることができない。

「…小エビちゃん、座ればぁ?」
そう言って、ポンポンと先輩が座るマットの横を手で叩く。
「あっ、えっと…」
「どーせあいつらが気付くのいつになるか分かんねぇしー、下手したら朝かもしれないよぉ。それまで立ってんのー?」
そう言われるも、中々座ろうとしない私に痺れを切らした先輩の長い腕が伸びてきた。
ぐんっと強い力で引っ張られた先は、フロイド先輩の足の上で。

「せ、先輩…!」
「大丈夫、別にこれ以上何もしねぇし」 
私の前にクロスされるように伸びた腕。先輩から離れようと身体をバタバタさせるも、大きなフロイド先輩に勝てるはずもなく。
抵抗するのを諦めた私は大人しく座ることにした。


「…すみません、重いですよね」
「はぁ?こんなヒョロヒョロの小エビで何言ってんの」
そう言って優しく頭を撫でられたまさにそのとき、ふと、先ほど感じた違和感を思い出す。

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