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深海の碧【ツイステ】

第5章 紅掛空ー導く



「(おかしい…何かがおかしい。)」

今日もモストロ・ラウンジは盛況、つい先程レジを締めたばかりで今は閉店作業中だ。
売上を計算するため、ジャーナルの束をめくるが、視界の端に彼らが目に留まる。

「………はぁーー」
うーうー唸ったり、大きな溜息をつきながらモップ掛けをするのは、フロイド。
気分屋の彼が仕事へのやる気を失くすのはよくあることだが、「早く寝たいからぁ」と言って、閉店作業は何時もテキパキこなしていた。
しかし、今のフロイドは同じ箇所を何往復も歩いていて、これでは一向に掃除が終わらない。
片や右の方を見れば、

「ふぅ………」
ぼーっと視点の合わないまま、布巾でシルバーを拭くのはジェイド。
仕事を淡々とこなしつつ何時もサボり勝ちなフロイドを注意する役なのに、そのシルバーをどこまでピカピカにするつもりなのか。既に反射して鏡のようになっているというのに。

フロイドとジェイドの様子が可笑しいのは何も今日が初めてではない。
ジェイドは三日ほど前から、フロイドに至ってはかれこれ一週間ほどこんな様子だ。いつも寮生に指示し、取りまとめているというのに、そんな面影は何処にもない。

「(これは困りましたねぇ…)」
定期テスト以来、お陰様で店は赤字ではなく寧ろ黒字、ましてや大盛況であるのに、主戦力の彼らがこれではまいってしまう。
一体何が彼らをこんな抜け殻のようにしてしまったのか。

…思い当たることは一つしかない。しかも理由は間違いなく同じだ。
幸いにも空調機修理のため、明日は丁度休店日。善は急げ、動くなら明日しかない。
問題は…何時も横にいる彼をどうするか、だ。しかし、

「…僕にかかれば造作ないことですがね」
人差し指で眼鏡を押し上げ、僕は脳内で計画を練ることにした。

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