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深海の碧【ツイステ】

第2章 花緑青ー薫る



「…これでよし」
エメラルドグリーンのリボンを結んだそれらは、我ながら中々の出来映え。
中身が崩れないよう、小さな紙袋の中へ丁寧に仕舞う。

「ユウーー!!早く行くゾー!」
「はいはい、ちょっと待って」
ズボンの右ポケットに小銭入れをしまい、左手にさっきの紙袋を持つ。
お待たせ、とグリムの元へ向かえば流石目敏い。スンスンと鼻をひくつかせ、食い物かと尋ねてくる。

「これは駄目って言ったでしょ?」
「むー、でもお腹空いたゾ!!」
「もうちょっと我慢して。これからお腹いっぱい食べていいから」
すると目をキラキラと輝かせ、早く行くゾと私の袖を引っ張り駆け出す。
…本当に、うちの相棒は食い意地張ってるんだから。そんな相棒が愛おしくて、思わず笑みが溢れてしまった。


あの日、気付けば私が居たのはオンボロ寮のベッドの上。陽はとうに暮れ、既に夜を迎えていた。
目を覚ますとそこには心配そうに此方を見つめるエース、デュース、ジャックとグリムの姿。事情が分からず混乱していた私にエース達が説明してくれたのはこうだ。 

『ユウが中庭で体調悪そうにしてたのをフロイド先輩とジェイド先輩が見つけて、此処まで運んでくれたんだぜ』
午後の授業を休む連絡を入れてくれたのも先輩方らしい。
3限目開始時にその話を聞いて、皆戻って来ようとしてくれたらしいが、リーチ兄弟が様子見てるから大丈夫だと先生が突っぱねたそう。
日課時限を終え慌ててオンボロ寮へ来たときには、私はベッドの上で眠っていて、その両脇には椅子に腰掛ける2人の姿があったとのこと。

『起きたらこの薬を飲ませろって言うのと、これから1週間はこれを振り撒けってさ』
そう言って渡されたのは、澄んだ青緑色の小さなボトル。上にはシルバーの人魚が付いていて、試しにそこを人差し指で押すとプシュッと透明無色のものが噴射される。
この匂い…深海の緑のような匂いは、何処かで感じたことがあった。

『何故これを…?』
『さぁ?先輩方は、気分が優れるおまじないって言ってたけど』
言われてみれば、確かに気分がスッキリする気がする。

『それより、ユウ…』
何時になくしかめ面のジャックを見上げると、パチンと軽くおでこを叩かれる。

『体調悪りぃなら早く言え!!』
『いや、本当それな』
そこからは3人と1匹から説教の嵐だった…


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