• テキストサイズ

深海の碧【ツイステ】

第1章 若草ーはじまり



「………んっ」
いつもは私が起こす役なのに、腹部に違和感を感じ目を覚ますと腰に手を当て仁王立ち姿の相棒が目の前にいた。
遅いんだゾ!と言うその大きな声は、何時もより一層頭に響く。てっきり寝起きだからか、と思ったけれど今考えるとそうではなかったらしい。
グリムが早起きなんて珍しい、そう思って時計を見れば着席すべき時間の10分前。
もっと早く起こして欲しかったと恨めしく思いつつも、きちんと起きなかった自分が悪いので口には出さない。
空腹で騒ぐグリムにツナ缶を投げ渡すと、急いで洗面を済ませ、制服に袖を通す。着せられていると感じていたこの制服もいつのまにか自分に合うようになった気がする。
線状のひび割れの入った鏡を一瞥し、時計を見上げると起床してから5分経っていた。

「…やばい!グリム行くよ!!」
「いきなり引っ張るな!ユウ!!」

まだツナが残っていたのだろう、未だに缶を舐め続けるグリムの腕を引っ張り寮の階段を駆け下りる。
ミシミシと不穏な音がするが、始めこそ気にしていたものの、最近は床も抜けたりしないだろうと安心し切っている。
今日の一限目は魔法史、つまりトレイン先生の授業。一分の遅刻も許されないのだから、全力疾走するしかない。
さっき感じた腹部の違和感は段々と大きくなってきたけど、今は気にしてられない。未だに騒いでる相棒の手を離さぬよう強く握り直し、教室へと走り続けた。
こんなとき瞬間魔法でも使えればいいのに、そんな魔力のない自分には決して有り得ないことを空想しながら。












「…はぁ」
一限の授業には何とか間に合ったものの、それから不運の連続だった。
まず、魔法史の授業開始5分後にしてグリムがうたた寝を始めた。
魔力を持たない私と獣のグリムは2人で一人。グリムの失態は私の責任で、私の失敗はグリムの責。
だからうたた寝に気付いて慌てて小突くも、彼は夢の中で一向に起きやしない。しかも始めは大人しかったのに、徐々に寝息をかき始め、終いには怪獣のような大きなイビキをかいてしまったのだ。
それは大教室最後列から2列目であっても教壇に居る先生の耳に届いたようで…


/ 84ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp