第10章 時を越えて〜収束へ〜
三太郎が座した天幕に
「申し上げます。朝倉景鏡様が到着されました。」
兵の報告が入る。
「通せ」
そう信長が告げると景鏡が入って来た。
「時間が掛かり、申し訳ございません。」
そう言って片膝をつく景鏡。
「良い。守備は?」
「上々かと。」
「良し。大儀であった。」
「はっ。有難き幸せ。」
やり取りすると
「大野へ向かう。準備しろ。」
「「「「はっ」」」」
「幸村、我々も向かうぞ。」
「はっ」
織田軍と上杉軍、朝倉軍は大野へ向けて動き出した。
一方、舞たち一行は三太郎を見送った後も引き続き上田城に滞在していた。捕らえた輩の処理等があり、出立を明日に伸ばしたのだ。
舞は忙しい佐助の代わりを申し出てくれた義元とともに、寛治を護衛に付けて上田城下を訪れていた。
「私、安土ではお城から出なかったから、城下町は初めてなんです。」
嬉しそうにそう言う舞は、童のようにキョロキョロしている。
「舞、離れたら困るから手を繋いで。」
義元はそう言うと、自然に舞の手を取った。その自然過ぎる行動に舞も素直に従う。
「なにか見たいものはあるかな?」
「ええと、反物屋さん?とか…」
「良いね。じゃあ、あそこへ行ってみよう。」
二人は連れ立って歩き出した。
美男美女が手を繋ぎ歩く姿はとても目立ち、町民の注目の的となっていたが、そんなことに気付かない二人は楽しそうに歩いて行った。
「邪魔するよ。」
「こんにちは。」
反物屋に到着した二人。
店内は色とりどり、様々な柄の反物が所狭しと並んでいる。
「うわぁ。すごい。」
感心する舞に
「いらっしゃいませ。」
と店主が顔を出した。
「おやまあ、これはまた素敵なご夫婦ですね。」
そう言ってニコニコする店主。
「えっ?夫婦?!あっ、いや私たちはそんなーー」
否定の言葉を言おうとする舞の唇に、義元は人差し指を乗せて黙らせ
「夫婦の方が都合が良いから、そのままで。」
と小声で耳打ちすると、舞は真っ赤になって肯いた。
「うん。ありがとう。舞、どんなものが見たいの?」
動じる様子もなく尋ねて来る義元に、恥ずかしがっていてもしょうがないと思い直した舞は
「ええと、丈夫な生地のものが欲しいです。」
と答えた。
「丈夫な生地?何に使うの?」
「マキビシを…」
「ああ、なるほど。」
そんな風に側から見れば仲睦まじい夫婦のように、二人は生地を物色し始めた。