第3章 時を越えて〜素性〜
「くくっ、貴様は本当におかしな女子だな。部屋でおとなしくしていれば良いものを…。籠の鳥は性に合わぬか。」
「はい。じっとしているのは性に合いません。」
「まあ、良い。秀吉、舞に何か仕事を与えて面倒見てやれ。」
「はあ。しかし…」
「俺が良いと言っている。貴様がやらぬと言うなら、天主に溜め置いて俺専属にしても良いのだが。」
「おっ、御館様!それはっ。なりません!」
「では、貴様が面倒見ろ。」
「……御意…」
ものすごく不満気に返事した豊臣秀吉に
「あのっ、豊臣秀吉さん。ご迷惑をお掛けしないように頑張りますので、よろしくお願いいたします。」
と頭を下げると
「…ああ。」
と素っ気なく短い返事が来た。
(まだ、私のこと信用できないんだろうなぁ。しょうがないけど)
気付かれないように小さく溜め息を吐くと、
「信長様、私からひとつご提案が。」
明智光秀が唐突に話し出した。
「なんだ?」
「はい。舞は先ほど、茶道、華道、書道、舞踊、武芸、馬術、弓術、楽器は人並みにできると述べました。」
「そうだな。」
「仕事を決める前にどれがどの程度できるのか確認し、秀でたものを任せるのが良いかと。」
「なるほどな。悪くない。舞、貴様の適正を見るために貴様がやれると言ったものを披露しろ。秀吉、準備はお前に任せる。」
「分かりました。」
「はっ。」
豊臣秀吉と同時に返事をして顔を上げると、明智光秀が意地悪で楽しそうな笑みを浮かべているのが見えた。
私を試してるのかなんなのか…。嫌な人!!