第9章 少しだけ未来の話(銀時裏夢)
聞き間違いで無かった事を確認した銀時は、そそくさと部屋に戻り着替えを済まして玄関へ向かう。
「どこ行くアルか?」
「ちょっとな……」
陰鬱な表情で出て行った銀時を見送って、神楽は首を傾げた。
一方銀時は、ぶつぶつと独り言を言いながら当て所なく通りを歩く。
「赤ちゃんってあれだよな。デキたって事だよな。いやでも待てよ、最後にしたのはちゃんとゴムしてたし、うっかりアレだった時は何か大丈夫だったような……そもそもこの間誘った時、月モノだからって断られて、銀さんの銀さんは銀さんによって収められたんだった」
銀時は必死で記憶を掘り起こした。
最後に行為に及んだのは約ひと月前。
珍しく万事屋の仕事が立て込み、最近はデートすら侭ならなかった。
「でもよく考えたら、本当に月モノかなんて確認してねぇし、もしかしたらヤりたくなかったとか……」
悪い考えに辿り着き、銀時はその場に立ち尽くす。
「銀さん以外と……?」
そんな筈はないと思いながらも、一度浮かんだ悪い考えはそう簡単に払拭出来ず、嫌な汗が吹き出した。
遼の性格上、不誠実な事は出来ないと思っているが、脅迫されていたり、無理矢理だったらわからない。
「嘘だろ、マジかよ……」
銀時の妄想の中で、遼が見知らぬ男に犯される。
嫌とも、助けてとも言えぬ状況で無理矢理──
そう言えば、先日のデートの時に遼は何か思い悩んだような表情をしていて、言葉少なだった。
もしかしてアレは、何か言い出そうとしていたのだろうか。
「あの時にはわかってたとか──ん?」
通りの向こうに見知った姿を見つけ、銀時は立ち止まって目を凝らす。
「アレは、真選組の土方沖田と──遼?」
三人は、随分仲が良さそうな様子で喋っており、傍目にも良い雰囲気なのがわかる。
銀時の記憶が確かなら、遼と真選組に繋がりは殆ど無く、顔見知り程度の筈だ。
その割に、遼と彼らの距離が近い。
「どういう事だ?
まさか、俺の知らない内に何か有ったとか?」
神楽が聞いたら確実に「束縛彼氏キモいアル」と言われかねない発言だが、盲目状態の銀時は物陰でギリギリと歯噛みする。