第17章 企画【〇〇しないと出られない部屋】
何やかんやで拉致された遼が目を覚ますと、そこは窓や出入り口が一切確認出来ないホテルのような内装の一室だった。広々としたベッドの上には、何故か遼と一緒に銀時が転がっている。
わけがわからないまま身を起こし、銀時を揺さぶった。
「銀ちゃん、起きてよ」
「うーっ、もう飲めねぇって……」
「また酔っ払ってるの?ねぇってば、銀ちゃん、起きてよ」
些か強めに揺さぶると、漸く銀時が気怠げに目を開ける。
「おはよ。ねぇ、ここ何処だかわかる?」
「ん、あー……ドコだここ?」
「質問に質問で返さないでよ。銀ちゃんもわからないって事は、誰かが私たちを?」
恨まれる覚えも憎まれる覚えもあるが、銀時と二人一緒にという意味がわからなかった。
「つーかここ、ラブホじゃねぇか」
「そうなの?」
「多分な。窓もねぇし、揃ってる設備も……って何だよ」
「詳しいなって思って。あ、何か気持ち悪いから近付かないでね」
すかさず遼はベッドを降りて、銀時から距離を取る。
「ちょっ、別に何もしねぇよ!つーか、お前もいい年なんだから、このくらいで一々嫌がるなよ!」
「いや、何か銀ちゃんが言うと生々しくて──ん?」
突然部屋のテレビが点いて砂嵐の画面が流れ始め、二人はそちらに注目した。
一瞬画面が乱れたかと思うと、間もなくして画面に文字が現れる。
「『ここは、ハグしないと出られない部屋です』だって。ふうん……まあ、やってみようか」
遼は一つ頷くと、銀時にぎゅっと抱きついた。すると『ピンポーン』と、正解を示すような音が鳴り響き、壁の一部が動いて出口が現れ、遼は銀時から離れて、そちらに向かう。
「じゃあ、帰ろう」
「いやいやいや、早過ぎるだろ。つーか俺、主人公でトップバッターだぞ?もうちょっと良い思い出来る筈だろ!?」
「誰に文句言ってるの。置いてくよ」
「遼、お前もお前だ!あっさり抱きつきやがって!!少しは恥じらいってもんをだな……」
「銀ちゃん、普通に気持ち悪い」
あからさまに顔を顰めた遼は、振り返りもせずに部屋を出て行った。
「あ、ちょっ、待って、遼ちゃん!お願いだからもう一回やり直して!頼むから、300円あげるから!!」
後はただ、残された銀時の叫びが虚しく響いたのだった。