第13章 闇の深淵であなたと(高杉裏夢)
高杉は遼の中から自身をずるりと引き抜くと、ゆったりと身を起こした。
促されるように遼も体を起こし、下着をつけようとして「あっ」と呟く。
秘裂から高杉が放った物がどろりと溢れ、どうしていいかわからず困難していると、手ぬぐいを渡された。
「ありがとう」
受け取って、そっと体を拭いながら、背を向けたままの高杉を見つめる。
「もしかして、後悔してる?」
尋ねると、ぴくりと肩が震えた。
その姿に、遼は堪らず後ろから抱きつく。
「私は後悔してないよ。晋ちゃんとなら、地獄だって恐くないから」
「なら、一緒に堕ちるか」
「そうだね。でも、もうちょっとだけ待ってて。真選組の隊士として頑張ってくるから」
「……俺は気が長くねぇからな、忘れちまう前に戻ってこい」
高杉の言葉に、遼は小さく頷くと着替えを済ませた。
「もうすぐ時間かな?」
「そうだな。なぁ、遼……傷はまだ痛むか?」
「まさか。もう六年も前だよ。それに、体の傷なんて晋ちゃんだって沢山ついてるじゃない」
くすりと笑った遼を、高杉は堪らず抱き寄せる。
細く小さなその体が背負ってしまった物を思うと、やるせなさで胸が痛んだ。
「晋ちゃん……ありがとう。それから、ごめんなさい」
高杉の優しさに甘えてしまえば、前に進めなくなる。差し伸べられた手は、まだ掴めない。
「行くか」
「うん」
高杉に促され、遼は真選組へ戻るために艦を降りた。
高杉はもう姿も見えない遼を想い、煙管の煙を薫らせる。
いつか、闇の深淵に堕ちるその日まで。