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とある、非日常の中の少女の日常。

第8章 「ねえ……知ってる?」




「お、おい、知ってるか!?」
「静雄を狙ってた奴が、粟楠会の連中に攫われたらしいぜ」
「まじか」「なんで!」「静雄の女が粟楠の身内らしい」
「どういう事だよ」「つまり、静雄は粟楠会の跡取り……?」






荒唐無稽なうわさが、

池袋の街の中で姿を変えながら、

飛び回る。






「聞いたか!聞いたかよ畜生!」
「静雄の奴、粟楠会の会長の隠し子だったんだとよ!?」
「げえー!マジで!?」「やばくね!?」
「俺、もう静雄は放っておくわ」「怖いわけじゃねぇぞ」
「でもほら、粟楠会は敵にするとめんどいからよ」






出来る事なら、静雄みたいな化け物とは関わりたくもない。

だからこそ、彼らはその噂に飛びついた。

噂が事実であるならば、
彼らにとって“一人の個人に手を出さない”理由ができる。



そんな個人の願望によって――

今日もまた、

新たな噂が池袋の街を駆け巡る。
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