• テキストサイズ

私が好きになったのは熊みたいな人でした

第2章 冒険者の街コルト


ここは、冒険者が多く集う街コルト。

大きくは無い街で、王都からもかなり離れているのだけれど、初級のダンジョンやあまり強くない魔物が出る森などが近隣に有り、新人冒険者から中級冒険者に人気のある街だ。




私は、そんなコルトの街のお宿、黒猫亭で住み込みで働いている。

旦那さんのハッチさんは無口だけれど凄く料理が上手で美味しいし、女将さんのソルマさんは元気いっぱいで気立てが良い。
小さいけれど人気のお宿だ。
私は小さい頃からここでお世話になっている。



そんな私なのだけれど、実は気になっている人がいる。
恥ずかしいのでまだ誰にも言ってはいないのだけれど、多分同僚のリリアンには気付かれてしまっているかもしれない。その人が近くにいるとドキドキして顔が熱くなって、つい目で追ってしまうのだ。


その人の名前はグレンさん。

黒猫亭に定期的に泊まりに来てくれるお客さんで、私が小さい頃からよく来てくれる。
だいたい二ヶ月に一度、一週間から長い時は二週間程泊まっていく人。

女将さんは彼の事を冒険者だよ、と言っていた。
でも一度も仲間と一緒に居るところを見かけた事が無いので、もしかしたら冒険者と言うよりは何か商いをされていらっしゃるのかもしれないと思っている。

グレンさんは熊のように大きくて、背などは小さい私の半分以上ある。黒い色の髪も髭も伸び放題のモサモサで、顔を覆い隠すくらいなので残念ながらどんなお顔をしているのかはよく分からない。
そして寡黙であまり喋ら無いせいか、威圧感が有るので、お宿に泊まる他の冒険者さん達も何時も遠巻きに眺めているだけだった。

そんなグレンさんだけれど、私はとても良い人だと思う。
私が重い物を持っていると手伝ってくれるし、疲れた顔をしているとポーションをくれたりと色々気遣ってくれる。
それに、街で迷子の子を助けようとして、逆に怖がらせて大泣きされてションボリしたり。捨てられた仔犬に餌をやって、ギルドに飼い主を探して貰えるように頼み込んだりしている姿も見かけた事がある。
とっても可愛らしくて優しい人なのだ。

そんなグレンさんの来訪を、まだかなと待っている内についつい気になる様になってしまったのだった。







予定なら、もうそろそろグレンさんがまた黒猫亭にやってくる時期のはず。

私はその日を今か今かと心待ちにしているのだった。
/ 58ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp