第2章 ブラック氏の黒歴史
「後ろめたい罪悪感に押し潰されそうだ…。それでも聞きたいと言うなら聞くがいい!まあ俺は言わんがな」
「………(何言ってんだ、このおっさん)」
名画はリビングにあった。今回はメイドも外で待機させてあるため屋敷にいるのは警察とこのブラック氏だけだ。
「わははは!これだけ厳重にしていれば盗まれる心配はない!イヤミはメイドに化けた怪盗ミューズにしてやられたそうだが俺は違う!メイドは全て外に出した!早く来い、怪盗ミューズ!今日がお前の命日だ!」
「…いや、殺しませんから…」
時間もイヤミの時よりかなり早い。捕まるのも時間の問題だろう。
「もうすぐ時間か」
「俺の勝ちだ、怪盗ミューズ!俺が滅亡させた家の物を取り戻してどうするつもりだったんだ?!」
「持ち主に返すのよ」
「「えっ?!」」
ミューズの声に慌てて姿を探すが、どこにも見当たらない。
「ええい、何をしているんだ?!とっとと捕まえろ!」
「3人一組で探せ!」
「はっ!」
バタバタと怪盗ミューズを探す警官たち。カラ松警部は手薄になったリビングに残って名画を見張っていた。時刻がちょうど予告の時間になろうとした時。
「な、なんだ?!うわぁああああ!」
玄関から叫び声がして、意識がそっちに行ったほんの一瞬。
「確かに返してもらったわよ」
振り向くと絵画はすでになく、縛り上げられた警官がいた。
「いつの間に…。どうやって…!」
「感心している場合か!さっさと捕まえろ!」
警官の縄を切ってやると、その警官も怪盗ミューズを探しに外へ出た。だが怪盗ミューズの姿はない。
「探せ!必ずその辺りにいるはずだ!」
「はっ!」
名画は結構大きさがあるので、あの一瞬で遠くへ持ち出すなど不可能だ。外には怪盗ミューズの事件を取材するためか、報道陣がいた。
「ちっ!邪魔しに来たのか…?」
カラ松警部は報道陣が嫌いだった。あることないことを報道し、世間を惑わすことしかしないと考えているからだ。そういう報道陣ばかりではないと思っても、どうも虫が好かない。今もキャスターがマイクで話しているのが聞こえる。
「警察は怪盗ミューズを追う模様です。以上現場から、ミューズがお伝えしました」
「はーっ。全く………。………ミューズ?!おい、君!」
追いかけようとしたがキャスターはすでにおらず、車の音が聞こえた。
