第35章 春の足音
杏と不死川が鬼を斬りながら強い鬼の気配を探して走り回っていたとき、突然近くを騒がしい鴉が飛んできた。
鴉「カァー!!カァー!!」
『鎹鴉が…』
不「誰か殺ったかァ??」
今までの鴉の傾向から戦闘の報告だろう、と耳を傾ける。
鴉「シノブ!!カナヲ!!伊之助!!上弦ノ弐撃破!!上弦ノ弐撃破!!」
『っ!!』
鴉の報告の声が耳に届いた瞬間、杏は思わず立ち止まった。
杏(童磨が…死んだ??本当に…??)
じわり、と涙が滲むのがわかる。
杏(姉さん…やったわ。私の仲間たちがアイツを倒してくれたわ。)
下を向くと、ポロポロと涙が溢れる。
杏(これで…もう…おわっ)
── ゆ「あら、まだでしょう??」
仇はとれた。
もう終わった。
そう言おうとしたとき、姉たちの声が聞こえてきた。
── つ「そうよ。アイツは確かに私たちを殺したやつだけどアイツは実行犯。」
── も「指示した奴がいるわ。」
『っ!!』
姉たちの言葉に涙がぴたりと止まる。
杏(…そうだった。だめね、私…。)
ふっ、と笑みをこぼす。
不「音白。顔を上げろ。ま…」
不死川からの厳しい声に杏は顔を上げる。
『はい。分かってます。まだ、終わってない。鬼の始祖が、全ての元凶がまだ残ってる…ですね。』
杏の表情を見た不死川はニヤリ、と笑う。
不「あァ。行くぞォ。」
『はいっ!!』
2人は再び走り出した。