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【鬼滅の刃/煉獄】冬来たりなば春遠からじ

第18章  共に



鴉の後を追って杏寿郎達が駆けつけた先には、体のあちこちから血を流した不死川が、一匹の鬼と対峙していた。

息が切れていて、どうやら攻めあぐねている様子だった。

「不死川!!」

「煉獄!!」

ザザッと不死川の隣に駆け寄った杏寿郎は、同僚を見つめて力強く頷く。

「加勢に来たぞ!下弦の壱はあれか!?」

杏寿郎の視線の先には、ニヤニヤと不遜な笑みを浮かべる鬼の姿があった。

「だが、一体どうしたんだ?君ほどの柱が、いくら壱とは言え、下弦の鬼相手に手こずるとは」

「…煉獄すまねぇ。俺がついていながら……!!ついていながら、アイツに咲の左腕を喰われちまった……!!」

鬼から目を離さず、瞬きもせずに、突然不死川の両目から大量の涙が流れ落ちた。

「アイツは、恐らく上弦の鬼に匹敵する力を手に入れた…!!」

不死川の、悔しさで震える声を聞きながら、杏寿郎の顔は月明かりを背から浴びて真っ黒に染まっていた。

ダンッ

と、地面が揺れるほどの踏み込みをして、杏寿郎が飛んだ。

「炎の呼吸 壱の型 不知火」

真正面から突撃した杏寿郎の刀を、鬼は思い切り腕を振って弾き返す。

押し戻されるような形となって地面に足をめり込ませた杏寿郎は、顔の前で構えた刀の後ろから、鬼の顔を穴が開くほど見つめた。

「お前は…よもや、下弦の弐か!!!?」

「もう下弦の弐じゃねぇよ。下弦の壱だ。だが、それもすぐに変わるだろうけどなぁ~」

鬼は長い舌をベロリと喉の奥から出して、ヒッヒッといやらしく笑った。

その容貌は、杏寿郎が記憶している姿とは大きく様変わりしていた。

下弦の鬼でいる間は、まだ人の形を残していた甚振であったが、今はもう全く違うカタチになっていた。

口は耳まで裂け、腕は四本に増え、足は二本だが、くるぶしから下が二つずつあるといった、完全に化物のそれであった。

変わっていないのは、相手を舐め回すように見る卑しい目だけだった。

鬼は大抵異形であるが、ここまでの変貌を遂げる者も珍しい。

その異様な変化の仕方から、咲の血の力がいかに特殊で強力であるのかが伺い知れるようだった。

「やっぱりアイツの血はすげぇなぁ。お前らを倒して、早く残りの体も喰いに行かねぇと。アイツが死ぬ前に」

鬼の下卑た笑いと共に、杏寿郎と不死川の刃が振り上げられた。

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