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【鬼滅の刃/煉獄】冬来たりなば春遠からじ

第18章  共に



そこからは、咲も未だかつて経験した事の無いような乱戦となった。

本来鬼は群れないはずであったが、この場には尋常ではない数の鬼が集まっている。

ひとところにこれほどまでの鬼が集結するのを、咲は今までに見たことが無かった。

だがそれは他の隠や剣士も同じことで、斬っても斬っても沸くように現れてくる鬼の姿に、剣士の顔も青ざめていた。

「うっ!!」

一人の剣士が、二体の鬼に挟まれた。

ギリギリギリと一体の攻撃を刀の鍔で受け止めながら、後ろから迫ってくる鬼には視線を向けることしかできないでいる。

「…っ!!」

バァン

と、咄嗟に咲は発砲した。

その弾は剣士と対峙している鬼の頭部を真横から貫通した。

「ギャッ」

鬼が一瞬ひるんだその隙に、ズバッ、と剣士の刀がその素っ首を跳ね上げ、背後から飛びかかってきた鬼を振り向きざまに斬り下ろした。

「村田さんっ」

咲が駆け寄ると、剣士はそのトレードマークとも言える綺麗な前髪を揺らしながら、へらっと引きつった笑みを見せた。

「お、おおっ、咲、助かったぜ!」

だが、そんな言葉を交わしている暇もなく、次から次へと鬼が襲いかかってくる。

咲は無我夢中で、この大混戦の中、恐ろしさで身動きが取れなくなっている隠達に、自身がいつも使っている藤の花の香水を振り掛けて回った。

この強烈な藤の花の香りをまとっていれば、通常の人間であれば鬼に狙われることはないだろうと思ったからだ。

これだけの数の鬼に囲まれて、咲も恐怖を感じない訳ではない。

むしろ、希少な稀血の身であるが故に、喰われる恐怖は人一倍であった。

それに、己が喰われた場合の鬼殺隊への脅威のことを考えると、まさに胸がすくむような思いだ。

だがやはり、普段から伊達に鬼に追い掛け回されている訳ではないので、他の隠達が腰を抜かさんばかりに震えている中、驚く程迅速に動くことができたのだった。

慣れというのは恐ろしいものだ。

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