第6章 はっけよいのこった
家族を殺した鬼と遭遇したことを、咲はすぐさま手紙で杏寿郎と不死川に報告したのだった。
手紙には、その鬼が下弦の弐に進化していたこと、あまつさえ「甚振(しんじん)」などと名乗っていたことなども書き添え、またもや取り逃がしてしまった悔しさをつづった。
二人からはすぐに「了解した」旨の返事が来て、どちらにも「気を落とすな。俺が必ず討ち取る」と書いてあったのだった。
岩柱・悲鳴嶼の家に泊めてもらった翌日の朝、一同はそこで分かれた。
炭治郎達は次の鬼討伐の任務へ。
咲は様々な隊士への届け物に向かうため。
そうして咲があちこちの隊士のもとを飛び回っていたある日のこと、立ち寄った街でばったり杏寿郎と出くわした。
「おーい、咲!」
腕を大きく振りながら、ニコニコと笑顔を浮かべて自身の名を呼んでくる杏寿郎の姿に、咲の顔にも笑顔が浮かんで、まるで幼子のように一目散に駆け寄っていった。
「杏寿郎さん!」
目の前まで走って来た咲を受け止めるように、杏寿郎は咲の肩にポンと手を置く。
「先日は手紙ありがとう!鬼を取り逃がしてしまったのは残念だが、君が無事で何よりだ!」
キリッとした表情の中にも少し安堵した様な色が見えて、咲はその顔に長兄の表情を重ねる。
咲はこくんと頷き、
「はい……。でも、絶対に見つけ出して必ず倒しましょうね!」
「うむ!」
グッ、と突き出した咲の拳に、杏寿郎の大きな拳がコツンと合わされる。
その拳の大きさがあまりにも違うものだから、咲は改めて杏寿郎の力強さを感じたのだった。