第3章 ゼウスの疑惑
ポセイドンはゼウスを睨みつける。
「返答次第ではタダじゃ済まんぞ」
「落ち着けって。その子、人間であの船に乗ってたんでしょ?どういう経緯があったのか、聞いてみたいんだよね」
「案外その子がはんに」
「トール、お前……!!」
「知らないわよ」
起き上がった○○が声を上げる。
「私はただあの船に乗っただけよ。確かに飛び降りて死ぬつもりだったけど、他人まで巻き込むなんて考えはなかったわ。船が爆発した経緯なんて、知らない。気づいたら浸水してて、爆発したのよ」
「うん、その子は悪くないよ」
ハデスはケルベロスに命じて一人の男を連れて来させていた。
「そいつ、誰?」
「おら!お前のせいで彼女が犯人扱いされてんだ!」
ハデスに背中を蹴られた男は反動でゼウスたちの前に出た。
「で、誰?」
「わ、私はただ世界一大きな船を造りたかったんだ!私の設計は完璧だった!あの進水式の時にあんなに傾くなんて!あれが原因だ!あれがなければボイラーが移動することはなかった!」
「うっわ、最低…。いるよねー、こういうの。自分は悪くないっていうやつ」
ヴィーナスもゼウスも、呆れた顔で男を見た。男は船の設計者で、爆発に巻き込まれて死んだのだ。ケルベロスに連れて来られたということは、地獄に堕ちたのだろう。
「ゼウス。どうするんです?」
「は?そいつ冥界にいるんでしょ?俺が口出しする案件じゃないよね」
「ま、待ってくれ!俺は地獄は嫌だ!!あ、あの女を差し出す!だから、俺を天国へ…!ぐぁあ!!」
ポセイドンの三叉槍が男を貫いた。男は灰のようになり、風に吹かれて消えた。
「我が妻をさげすむ奴は、許さん」
「あーあ…。ケルベロスに食わそうと思ったのに…」
ゼウスとトールがバツの悪そうな顔をして○○の前に来た。
「疑ったりして、ごめんなさい」
「俺も、ごめんな。お詫びに力を与えるよ。どんなのがいい?」
「ポセを守れる力が欲しい」
「○○…」
「ポセの傷を治したり、一緒に戦える力が欲しいの。守られるだけなんて嫌。ポセに背中を任される間柄でいたい」
「くぅー!妬けちゃうなぁ!いいなあ、ポセイドン。僕もこういう人、探そう!」
「じゃあさ、そういう力を秘めた指輪をあげるから、ここで結婚式挙げちゃいなよ!」