第18章 そしてWCは伝説となる
『あっ君のDFはどんな連続攻撃でも崩せない。反射神経+あの体格で大概のシュートにほとんど跳ばずに届くからね。けどCの高さを持つてっちゃんの中・長距離シュートには、あっ君でも跳ばなければ届かない。跳べば着地するまでワンテンポ次の動作は遅れる。そこから一手目の遅れを連鎖・拡大させる連続攻撃は分かっていても追いつけない。まだ着地が間に合ってないからね』
そしてこのパターンはもう一度繰り返された。同じようにあっ君がつられてヘルプに跳び、空いた所へ日向先輩がすかさず3P、そしてこれでついに1桁差にまで追いついた。ここで陽泉のベンチが動く。
「緊急TOか。さすがに想定外だったみてーだな」
「確かに凄い…けどこの作戦ってつまりムッ君を木吉さんに引き付けるためでしょ?けど彼の中長距離シュートの確立の悪さを考えたら、ムッ君は無理して飛ぶ必要はないんじゃ…」
『理屈はそうだけど、実際はそう単純な話じゃないよ。そうさせないためにも伏線張ってるし』
捺美「伏線?」
『1つ目は直前の3P。あれを1発で決めたのは大きい。確率の悪さを知っててもなお、また入るかもと思わせるには十分のインパクトだった。しかもてっちゃんには後出しの権利があるから、いざシュートに行く時もフェイクじゃなくて途中まで本気で撃ちに行ってるの』
「もう1つは…まぁ紫原の様子からの推測でしかねーけど…アイツ挑発して怒らせたんだろ。何言ったかは知んねーけど。まー元からあーゆータイプは嫌いだしな、あいつは。そーゆー伏線が紫原の体を咄嗟に動かせちまう。自分が嫌われてる事まで作戦に組み込んじまうんだから、人の良さそうな顔して実はしたたかもいいトコだ」
『そういうトコは昔から図太いからね、てっちゃんは』
だけどてっちゃんの汗の量は凄い。OFではPG、DFではCとして1人2役こなしているようなモノだから仕方ない事なんだけど、それ以上に気迫が凄い。昔大敗したあっ君相手に気分が乗るのはおかしい事じゃない。だけど少し入れ込みすぎにも感じてしまう。
TOあけに戻って来た大我君は野性を纏っていた。辰也さんはシュートのフェイク、ドライブのフェイクを織り交ぜたシュートを撃つ。それはもう鮮やかすぎるほどに。