第8章 2つの影【リーチ兄弟】
「……またか」
朝教室へ行くと自分がいつも使っているものが無くなっていた。
今に始まったことではないが、最近は多い。
男子校にイレギュラーにいる私に対して嫌な思いをしている生徒も多いという事だろう。
ああ、この間は寮長に色目使いやがってとかだったかな。
この私に使える色気が見あたるのだろうか。見あたるのであればそれはそれで見る目があると褒めてあげたい。
「…にしてもなぁ、地味だなぁ」
先日は教科書、今日は筆箱。
地味なのだ。無くなるものが。
前の世界のいじめのように自分の机がある訳でもないから机が汚れてるなんてことは無いが、もう少し考えられないのかと哀れみすら感じる。
そこへぞろぞろと生徒が入ってくる。
「お!ユウ!おはよう!」
「おはようエース。今日筆箱忘れちゃったからペン貸してくれる?」
「いいぜ~。…にしてもこないだも何かないって言ってなかったっけ」
「あー、教科書ね。どっかやっちゃったんだわ」
大丈夫かよーと心配してくれるが、物がなくなった程度で迷惑はかけたくないので2人には黙っている。
どうせ地味な嫌がらせだし、と思っていた数日後。
大きな問題が起きた。
「…は?」
昨日の夜は、普通にオンボロ寮で寝ていた、はず…。
「ここ何処」
見たことも無い場所に足を繋がれ、両手は金属のようなもので繋がれていた。
「(……牢獄じゃんかこんなの……最悪)」
なんとか枷を外そうとするが全く外れない。
「…詰んだ…?」
***
一方その頃。
「ふなぁ~あぁ、もう朝なんだゾ~?……ユウなんで起こしてくれない……ふなぁ!?!?!」
いつもより遅く起きたグリムは起こしてくれるはずのユウがいないことに気づく。
「いないなんてこと今まで無かったんだゾ、、」
グリムは急いで学園へと向かう。
「はっ!あれはエース達なんだゾ!おーーーい!!!」
「お?グリム。ユウは?」
「おお、おきたら、ユウがいなかったんだゾ……!!!こんなこと無かったんだゾ……最近様子がおかしかったし何かあったのかもしれないんだゾ~……」
グリムは2人には飛びつき今にも泣きそうな顔で訴える。
「「は?ユウがいなかった?」」
グリムの言葉に2人は固まり、一目散に学園へと急ぐ。