第8章 ひと月の性愛
マンションまでの道を走って戻る。
ドアを開けて鍵をかけ、息を整える。
「はっ、は、はぁ、っ」
瑞稀は嘘が下手だ。
一緒に過ごしていれば分かる。
美和はこの一ヶ月間、週に一度戻っていた位で後はずっと瑞稀の所に居た。
あたしを抱きながら好きな女性をすぐに作れる性格では無い。
他の女性と付き合ってあたしを抱けるような人でも無い。
でも、そんな事はどうでもいい。
瑞稀が終わりにしたいと言った。
それが全てだ。
「…………ぅ、っ」
あたしは縋るような事はしない。
ただ男女が惹かれ合ってそれが終わっただけ。
「う、ぅぇっ………」
美和は戸口に寄りかかって膝を抱えた。
「好きだっ………た、のに………」
一緒に時を過ごして身体を重ねていくうちにどんどん瑞稀を好きになっていた。
独りに慣れている風で、そのくせ熱くて優しくて。
「ぅ……っ…………」
美和は声を押し殺して泣いた。
ただ、ずっと瑞稀と一緒に居たかった。
……大丈夫。
恋が終わっただけだから。
明日も仕事頑張らなきゃ。
明日は元気になるから。