第20章 現実はナイトメア
「とは言っても。ただ俺のワガママを押し付けるだけじゃ、な。
ローズが眠ったままになるのが一番困る…というか、それだけは回避しないと」
『それなんだけど…私、本当に眠りになんてつくのかしら。
だって、糸車に気を付けてさえいれば大丈夫だと思わない?
いくら私がドジだからって、糸車のつむに触っちゃ駄目って分かってるのに、不用意に近付いたりしないもの』
「それは、たしかにそうだな…。だが最悪のケースを想定して動いておいた方が 絶対にいいだろ?準備は大切だぞ?
で…誰なんだ?お前に選んでもらえた、世界で一番幸福な男は」
『えぇ…それ聞いちゃうんだ』
ローズは不思議だと思った。
告白の返事は、キスをもって返してくれと言ったのはトレイなのに。私の想い人を訪ねるのだ。
「聞きたくないぞ?本当はな。実際、考えただけで腹わたが煮え繰り返りそうなんだ」はは
『わ、笑って言う台詞ではないわね』
「だがな、お前が助かる為なら 俺の腹わたなんかどうなったっていいんだよ。
ローズの好きな男に事情を説明してだな、来たる日にはお前にキ…キス…を、」
『トレイ?無理して言いたくない事、言わなくても…』
「いや!すまん、大丈夫だ。そこは割り切らないとな。
で、相手は誰なんだ?リドルやデュースじゃないんだろう?」
『……うん。違う』
「まさか、あの双子とか。アズール、なわけは無いしな」
結局、彼女はトレイにマレウスの名は言わなかった。
自分の事を好きだと言ってくれている相手に、他の男とのキューピッドになって貰うなど。そんな非情な事、頼めるはずもない。
ローズは、トレイやリドルが大好きなのだ。2人に そんな辛い役回りをさせるくらいなら、いっそ自分は目覚めないままでも構わない。そう思えるくらいには、彼女は2人が大好きなのだ。