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眠り姫の物語【ツイステ】

第11章 菓子より甘いはクローバー




トレイは今日も、彼女の為に菓子を焼く。

ありったけの愛を込めて。


菓子作りにしろ 料理にしろ、美味しく作る為に1番大切な事は

愛情だと。彼は考えていた。

そして、この想いは他の誰にも負けない。という自負もあった。


この5年間で、成長したのは なにもこの図体だけではない。

ローズを想う気持ちも大きくなっていた。


最初は ただ彼女の、可愛くて綺麗な見た目に惹かれているのだと。

トレイ自身も思っていた。

しかし…そうではないと確信した、ある出来事があった。

あれは、彼等が出会ってから まだ間もない頃の

とある夜の事…



——————————


『トレイ…?…トレイってば、

ねぇ大丈夫?聞こえてる?』

「!!」

トレイは、隣に立つローズの声にやっと気が付いた。

「悪い、ちょっとぼーっとしていたみたいだ」

彼は小麦粉の付いた手で、鼻の頭をかいた。

『珍しいわね。トレイがお菓子作り中に呆けるなんて』

ローズはそう言って、自らのハンカチでトレイの鼻を汚してしまった小麦粉を拭き取ってやる。

急に顔に触れられた事に驚きつつも、彼はローズが拭きやすいように少しだけ背を落とす。

「あぁちょっと…数年前の事を思い出してな」

『数年前…?一体、何を思い出したの?』

「それは……

秘密」

今度は顔に粉がつかないように、気を使って人差し指を自分の口元にあてた。

『えぇー、なにそれ、気になるっ』

「はは。それより、材料の計量はどうした?もう全部計り終わったのか?」

『ふふんっ、トレイがぼーっとしてる間に終わらせたわ!

全部キッチリ計って、この1番大きいボールの中に投入済みよ!

混ぜてもいい!?』

腰に手を当て、えっへんと威張る彼女。しかしトレイは容赦なく告げる。

「お、卵もバターも砂糖も薄力粉も、全部入れたんだな。

ははっ、よし!やり直しだ」

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