第3章 episode3
「ほんとにありがとう!貞子ちゃんのおかげだよ!」
お礼は嬉しい。素直に。人の役に立てたのなんで
何年振りだろう…
でも…貞子なんだ。感動に水を差す。
ちゃんと自己紹介してないもんな。仕方ないか。
そう思ったとき
「てかさ?貞子って違うくね?部屋の隅にいてハッピーにしてくれるって
貞子ってより"座敷わらし"じゃね??わらしちゃんの方が合ってね?」
「確かに!今回はほんとに助かった!次、新ネタ出来た時も
よろしくお願いします!わらしちゃん!」
テンションだけで言われた「わらしちゃん」。
このあだ名は全然しっくり来てないけど…
喜んでくれていることは間違いなかった。
このコンビの急成長はサークル内でも話題に上がった。
2人は自らの手柄にせず、私のアドバイスがあったからだと
皆に話してくれたらしく
こののち、私にネタを見てほしいとお願いが来る人が増えた。
そうして求められると、この場所を
なんとなく「居場所」として感じられるようになっていった。
少しでも誰かの役に立てていることが、私の日々の生活に希望を与えた。
自分にもできることがあるんだと思えた。
相変わらずコミュニケーションをとるのは下手だし
目を見て話すのも怖いけど…でも、頑張りたいと思えた。
こんな気持ちになれるなんて…
兄はここまでを予想していたのだろうか?
気が付けば家での話題はサークルの話ばかりになっていた。
兄は私のどんな話も笑顔で聞いてくれた。