第3章 episode3
あれから数日が立った。
「明日夕方、外出て来れる?」
兄からの突然の一言に私はビックリした。
いつもは、どれだけ忙しくても買い物も済ませて来てくれる兄。
一緒に暮らし始めて、こんなこと初めてだった。
『大丈夫だけど…どしたの?』
ニヤリと笑った兄に嫌な予感がした。
その予感は24時間後、的中した。
兄との待ち合わせ場所は、とある駅前。
土地勘のない私は案の定、早めに出たのに迷子。
結局兄と合流できたのは待ち合わせ時間から15分後だった。
「時間がないから、ちょっと走るけど大丈夫?」
『う、うん!ごめんね!』
振り返りながら走る兄の後ろを追いかけるので
精一杯。体力の落ちっぷりを実感する…
運動しなきゃなぁ…なんて思いながら走って行く。
…着いたのは大学の一室。
中からは、にぎやかな声が聞こえる。
兄は私にそっと一言「失礼のないようにね。」とだけ言って
扉を開いた。
そこには兄と同年代の人たちがたくさんいた。
その中に数人見た顔がある。
…あ、あの人だ。。
ということは、ここは…ナショグルお笑い愛好会の練習場所。
兄は何故か私を自分たちの練習場所へ連れてきた。
『どうして…?』
兄に聞こうとしたとき、あの人が話しかけてきた。
「Pさん、お疲れさーん!」
「富永さん!お疲れ様です!」
兄は元気よく返事したが、私の心はズシンと重くなった。
この人…嫌なのに。。