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ただそこで生きて【竈門炭治郎】

第2章 幼馴染


「冨岡先生にこっぴどく怒られた…」

「うゅ…のせい…ごめんなさい…」

「耳飾り外せって…」

「いや遅刻のことじゃねーのかよ」


幼馴染にナイスツッコミをかまされたところでやっと今日も学校生活が始まった。

ちなみに冨岡先生に怒られるのは全然珍しいことではなく、
俺は父さんの形見である耳飾りが原因で、
は日に日に増えていくピアスが原因で、
俺たちふたりはよく注意されている…。



(ガタガタ…ガタン)


(あ…始まった)

は、双極性のうつ病だ。
集中力や記憶力が欠落することがよくあって、今椅子がガタガタと音を鳴らしているのも集中力がなくてじっとしていられなくて貧乏揺すりをしてしまい、まともに授業が聞けないからだ。

は、基本的にいつも笑顔でテンションが高い。
だがその妙な明るさが俺にはひどく危なっかしく感じる。
そのまま何も言わずにどこかへいなくなってしまいそうな。
小さい子供が迷子にならないように見ていなきゃいけない、というような気持ちになるのだ。

実際、ごく普通に笑顔で会話を交わした直後に部屋でリストカットをしていたところを見たこともある。

その時のの目はひどく虚ろで光を宿しておらず、小さい声で、「もっと上手に笑わなきゃ」、「じゃないとは要らない子」、とうわ言のように言っていた。

父親に、愛してもらえなかったから。
死ぬほど焦がれた愛を貰えなかったから。
きっと愛されたくて、無理をして笑ってるんだろう。

中学2年生の時には精神病棟に入院したこともあった。今でも月に一度、薬とカウンセリングのために心療内科へ通ってる。

だから俺には到底理解が出来ないのだ。


「お前の幼馴染のツインテールの子!
めっちゃ地雷女だよな」



何故、精神疾患で苦しんでいる人のことをそんなふうに言うのか。

地雷ってなんだ?分からない単語だけど、
そんな軽い言葉ひとことなんかじゃ片付けられないほど重いものをは背負ってる。

突然夜中に、俺に「死にたい」「殺して」って縋ってくることもあるくらいに不安定なのに、それでも必死に生きようとしてるのに。


「かわいい子だぞ?」


は、普通の女の子と何も変わらない。
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