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【降谷零】なにも、知らない【安室透】

第5章 名前


翌日、目が覚めてもお兄さんは居なかった。
帰って来た形跡はあるのだけれど、姿はない。
冷蔵庫に入れておいた鮭のクリーム煮も無くなっていた。

「私のクリーム煮が…」

いや、いいんだよ。
いつもお兄さんが作ってくれてたし、お兄さんの食材勝手に使ったし、いいんだけどさ。

「朝から何か作る気になれない」

こういう時、シリアルでもあれば便利なんだけど…。お兄さんの家に買い置きはなかった。

ソファに座ってぼーっとテレビを眺めていると、例の火薬の窃盗事件がまだ取り上げられている。

「どの世界でも、他に大きなニュースがない限り同じのばっかなのかな」

ポチポチと切り替えてみても、他の放送局も、相変わらず火薬窃盗の話ばかり。

「在宅仕事でも探そうかなぁ。ネットに口座作ればいいだろうし」

暇すぎて携帯で職探しでもしようと手に取ったら、いつの間にかピコピコと光っている。
そこには『鮭、美味かった』と簡潔な言葉が並んでいる。

「私の鮭……」

また今度作ろうと思いながらも、特に返信する用事もないので、そのまま職探しのネットサーフィンを始めた。



半日ほど、目ぼしいものをいくつかブクマしていると、ぐうとお腹が鳴る。
仕方ない、何か作るかと立ち上がると、つけっぱなしだったテレビが何やら騒がしい。

「なに?えっ、爆弾テロ予告?」

テロップが伝えている言葉は物騒なものだった。
しかも、見覚えのある地名を連呼している。

「この近くじゃない?免許証どこだっけ…」

探して見てみたら、やはり記載されている地名と同じもの。
この地名がどのくらい広いのか、どの場所が該当しているのか、念のため携帯で地図を確認してみる。

「免許の住所が本当にここなら、ちょっと近いかも…?ま、私には関係ないか」

冷蔵庫を確認して、ベーコンとほうれん草を見つけた。本当はコーンも欲しいとこだけど…一缶は多すぎるんだよなぁ。
夕飯にコーンバター作ればいいか、と結論付けて簡単な和風パスタを作った。

「外出たらカップ麺大量買いしよ」

やっぱり料理は好きじゃないな、と思いながら食べ終わった皿を片付けた。
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