第4章 *重なる手
風呂から上がった迅が部屋へ入ると布団に丸まっている円がぐっすりと眠っていた。今日一日で色々とあって疲れも溜まっているだろう。おれも早く寝るか、と思い円を起こさないように気をつけながら彼女に腕枕をして向き合う形で横になる。迅の体温を感じとったのか、もぞもぞと動いては彼の胸元に顔を擦り寄せる円。
「まるでネコだな」
ポツリと呟いては、空いている方の手を彼女の頬に添えてゆっくりと唇を重ねる。ちゅっ、と小さくリップ音を立てて離れる唇。化粧はしていないはずなのに紅く色付いている彼女の口元から目が離せない。
「……ごめん」
小さく謝ると何度も何度も触れるだけの口付けを交わす。起こしてしまうかもしれない、という罪悪感があったが火が点いてしまった行動は簡単には辞められなかった。
「んっ……」
小さく漏れた吐息に熱が集まるのを感じた。あとで怒られるなと思いながらもまだ目を覚さない円を抱きしめ、身体のラインを確かめるように手を這わせる。少し息苦しくなったのか、酸素を取り込もうとして薄らと開けた唇の隙間から舌を滑り込ませた。
「んっ、ん……はっ」
歯の隙間に舌を捻じ込み、円の舌と絡ませる。横向けだった体勢から迅は身体を起こして円に覆い被さるように上へと乗った。円が目を開いたがまだ頭が覚醒していないのか、ボーッとこちらを見ながらされるがままの状態だった。ゆっくりと唇を離すとツゥーッと唾液が糸を引いていた。
「ゆう、いち……」
「起こしてごめんな」
「ん……もっと……」
迅の首に腕を回すと顔を引き寄せて円から唇を重ねる。まだ夢なのか現実なのか頭の中では分かっていなかったが、恋人から求められていることが嬉しかった円は自分から舌を出して迅のと絡める。
「んっ、んぅ」
「……っ、止まらなくなりそう」
もう一度唇を重ねると円の服の隙間から手を忍び込ませる。腰のラインをなぞった後に手を上へと滑らせると下着を身につけていなかったため、すぐに彼女の胸へと辿り着く。
「待っ、」
「いい?円が嫌なら止める」
「その聞き方、ずるいよ」
嫌だと言えないことは分かっている。むしろ彼の熱の篭った瞳を見てしまえば、拒否することなんてできない。