第15章 仕返しのキス
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足音が聞こえなくなってから、光秀は深く息をついた。
「……まったく、えらい目に遭った」
散々殴られ、蹴られ、痛めつけられたことよりも、秀吉と茜にかけられた言葉の方が、光秀の心をえぐった。
「それにしても……」
頬に残る口づけの感触を、指先でじっくりと確かめる。
「……まさか茜が、こんな仕返しを食らわせてくるとは」
こぼれ落ちた笑みが、顔の傷口をひどく疼かせる。
けれど、痛くてもよかった。
「なかなかにくたびれたが、休んでいるわけにもいかない。さて……ひと仕事と行こう」
光秀はひとり闇の中で立ち上がり、乱れた着物の襟を正した。
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