第15章 仕返しのキス
「信長様は……光秀さんが裏切り者だと確信してらっしゃるんですか?」
「奴という人間について俺が確信しているのは、ただ一点だ。光秀が俺の寝首をかく時は、俺が行くべき道を誤った時だ」
(え……?)
「–––話は終わりだ」
戸惑いが消えないまま、私は秀吉さんと広間をあとにした。
「さっきの言葉、どういう意味だったんでしょう……」
「信長様は信長様なりのやり方で、あいつに信を置いてるってことだ。昔から、そうだった」
「昔から……?」
「信長様は、死地に追い込まれたあいつを、自ら先陣切って助けに駆けつけたことさえあるんだ。その時あいつが戦った相手が、顕如。今回のことは……皮肉にもほどがある巡り合わせだ」