第9章 偽りの許嫁
私の視線の先にいる、残酷で冷酷な、だけど甘い妖のような人。
(こんな酷いひとのことなんて、どうなったって私には関係ないのに……)
息を飲むと、覚悟を決めて私は口を開いた
「み……光秀さんの、言うとおりです」
「茜、お前、無理に言わされてるんじゃ……」
「違い…ます」
(今この瞬間は、そうじゃない。無理はしていない……)
「ただし……信長様、ひとつ誤解を解かせてもらってもいいですか?」
「ほう? なんだ、言ってみろ」
「許嫁になる話をお受けしたわけじゃありません。まだ、その……考え中です!」