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クロバス+カレシ

第1章 プロローグ


「…リマさん、」


数学の授業中、毎日の朝練と距離が遠いおかげで急な坂道を自転車でもうダッシュしている私は机に突っ伏して爆睡していた。
「リマさん、起きてください」
私を呼ぶ、穏やかで少しだけ低めのその声が私の鼓膜を刺激する。
「…ん…?」
「リマさん、はい、プリントです」
「…ふぇ?」
「ふぇ、じゃないですよ。ほら、早く回さないと火神くん、困ってます」
「えっ、あ、ごめんごめん!」
私はあわてて黒子くんからプリントを受け取り、後ろの席の火神に渡す。
「おい、リマ、おせーじゃねーか」
「…ごっ、ごめんってばぁっ!」
私が火神にプリントを渡すと、火神は受け取る際、私を少し睨む。
しかしすぐにいつも通りのニッ、とした笑顔に戻り、プリントを後列に渡すと、私の頭をぐしゃりと乱すように撫でた。
「ウソだっつの。おら、前向けよ」
「…わ、分かってます!」
私は頭で動いている火神の大きな手のひらを握り、火神の胸辺りに押し付ける様に戻し、前を向いた。
するとそこには、私達のやり取りをじっ、と眺めていた黒子くんがいた。
「…あ、黒子くん、ありがとうねっ、起こしてくれたみたいで…」
「いえ、どういたしまして」
ニッコリと微笑む黒子くんを申し訳ない気持ちで見ていると、後ろからバカにしたような声がかかる。
「リマ、お前ヨダレたらして寝てたぞ?」
「…え、は、はぁ!?後ろのあんたが見える訳ないじゃんっ!ねえ、黒子くんっ」
火神にバカにされた私は真っ赤な顔をして黒子くんに同意を求める。
しかし黒子くんはすぐには頷かず、一度考えるようにして、
「いや、垂らしてましたね」
と口にした。
「…え、まじなかんじですか…」
「ハハハッ!黒子、今日はノリがいいじゃねえか!」
「…うっせえっ!ばかがみ!削ぐぞ!」
私を見て腹を抱えて笑う火神に私は怒鳴る。
端からみたら凄く仲が良い光景。
でもこの中に、恋、と呼べるものがあるなんて、今の私は知る予知もない。
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